ウォーロード 男たちの誓い 07年香港=中国合作
2009年05月14日 12:51

2009年5月10日新宿ミラノ1にて鑑賞
評価★★★★★★★★☆☆
監督:ピーター・チャン
出演:ジェット・リー、アンディ・ラウ、金城武、シュー・ジンレイ、ウェイ・ツォンワン、クゥ・パオミン、ワン・フイウィン他
原題:「投名状」
英語題:「THE WARLORDS」
配給:ブロードメディア/東宝
上映時間:113分
2007年中国一の興行収入を記録、その年の香港電影金像奨8部門を受賞した作品がやっと公開された。清朝末期の1870年に起きた実在した両江総督の馬新貽の暗殺事件がベースになっているが、実行犯の張文祥が殺害動機などを語らぬまま死刑になったため、謎の多い史実になっている。
その後多くの書籍と映像化がなされるが、中でも有名なのはジョン・ウー監督が師事する武侠映画界の巨匠チャン・チェ監督作品「ブラッド・ブラザーズ/刺馬」だろう。


「ウォーロード」は「刺馬」のリメイクと云われる事があるが、大まかな設定と人物関係図が似ている位で作品の本質は大分違う。男気溢れる世界観にメロドラマを付け加えた、比較的判り易い人間ドラマの「刺馬」に対し、人間性を深く掘り下げた上質な人間ドラマが「ウォーロード」になる。
この作品で特に目を惹くのは優れたキャラクター設定だろう。ジェット・リー演じるパンは未来を見据えた理想主義者で、時に野心のため非常な決断を下す事もある人物だ。反対にアンディ・ラウ演じるアルフは昔気質の現実主義者で、仲間内には慕われるが大局を見据える事ができない。
と、ここまでは良くある対立構図になっている訳だが、実は一番難解であり面白い人物が金城演じるチャンだ。彼は何事をも白黒ハッキリさせる性質で、即決力はあるがひどく考えが短絡的である。それ故パンとアルフの対立関係にもアッサリと揺れ動き、簡単に間違いを犯してしまう。
世の中というのは白黒ハッキリする事など無い。正解が無いからこそ人は思い悩むのだ。パンやアルフでさえその時々に悩み葛藤しようやく結論を出す。だからこそその決断が残酷な結果を招いたとしても、彼らの心意気が深く感じ取れるのだ。
だが結果ばかりを求めてしまうチャンは、本能的に行動してしまうため、救われない結果を生んでしまう事が多い。これは純粋ゆえ非常に怖い人間性を描いているとも云える。本人に悪気は無く、他者の正義より自分の正義が優先され、それは絶対的に揺るがないのだ。
人間描写が優れ、アクションも少ないながら重厚且つ残虐性に溢れた迫力ある映像になっている。「レッドクリフ」に押されるカタチで歴史超大作が次々公開されているが、その中でも頭ひとつ抜きん出た作品だ。ドラマ部分で言えば「レッドクリフ」より上質と言ってしまってもいい。
ただ残念なのはオリジナルより14~5分カットされている事だ。その多くは残酷描写とエロ描写だが、実はドラマ部分で重要と思われるシーンも結構カットされている。私は以前輸入版を譲り受けていたのでオリジナル版を観ていたのだが、ひょっとしたら作品の印象が変わってしまうかもしれないほどの違いが見られる。これは是非DVDでもいいがオリジナル全長版を収録して欲しい。
あとホントに全く判らないのはエンディング曲が「THE ALFEE」である事だ。どういった経緯でそうなったのかは皆目見当が付かないし、曲そのものも作品に合っているとは思えない。確かアンディ・ラウがエンディング曲を歌っていたと思ったが、それではダメなのだろうか?
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