サベイランス 07年カナダ
2010年02月23日 13:18

2010年2月14日シアターN渋谷にて鑑賞
評価★★★★★★☆☆☆☆
製作総指揮:デヴィッド・リンチ
監督/脚本:ジェニファー・リンチ
出演:ジュリア・オーモンド、ビル・ブルマン、ライアン・シンプキンス、ペル・ジェームズ、ケント・ハーバー、マイケル・アイアンサンドほか
原題:「SURVEILLANCE」
配給:ファインフィルムズ
上映時間:98分
デヴィッド・リンチの愛娘・ジェニファー・リンチが、「ボクシング・へレナ」以来14年ぶりに監督した作品。宣伝文句が”リンチの娘”しかないため不条理ワールド炸裂とか謳っているが、意外に真っ当なサスペンスだった。
サンタ・フェの田舎町で起こっている凶悪な連続殺人事件。捜査に乗り出したFBI捜査官のエリザベスとサムは、地方警察で保護されている殺人現場に居合わせた3人の目撃者に対して事情聴取を開始する。同僚を目の前で殺され、自らも傷を負った警察官のジャック、彼氏を殺されたコカイン中毒のボビー、そして家族を目の前で惨殺された8歳の少女ステファニー。ビデオカメラを設置し、監視されながら取り調べは進められていくのだった。
(Yahoo映画レビューに投稿した「サベイランス」感想文)
映画を含む何かしらの作品と云うのは、観た人の経験や人生観によってその感想が異なってくるモノだ。この作品も私の場合はたまたま先の展開が読めてしまった(近い感覚の作品を最近観ていたから)だけであって、予想とは違う衝撃のラストを新鮮な気持ちで迎えられる人も大勢いるだろう。こればかりは実際観てみるまで誰にも判る筈はなく、それこそが正に予測不可能な事柄だと云える。
とは言ってもこの作品の面白さは事件の”結果”ではなくその”経緯”なので、衝撃とされるラストはその蛇足に過ぎない(と私は思っている)。ただまあこの作品の資質っていうのが監督の感性な訳だけれども、それがねェ、結構普通じゃないんだよねェ。オヤジであるデヴィット・リンチでさえ懸念しちゃったくらい(あのラストはないだろう、みたいな)で、その監督の感性の方がどっちかと云えば私には衝撃だったよ。
それとこの作品にはロクでもない奴ばかりが登場するんだけど、あまりに救いの無い連中ばかりってのも個人的にはちょっとダメだった。ダメな中にも愛嬌があればいいんだけど、人としてダメな連中ばっかりでどうにも感情移入ができない。だから登場人物の行く末が幾ら不幸になろうとも、心があまり痛まなかったりしてしまうのだ。
そういう繊細な人間描写と云う意味では物足りない作品だったかなぁ。
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コメント
No title
「それとこの作品にはロクでもない奴ばかりが登場するんだけど、あまりに救いの無い連中ばかりってのも個人的にはちょっとダメだった。ダメな中にも愛嬌があればいいんだけど、人としてダメな連中ばっかりでどうにも感情移入ができない。だから登場人物の行く末が幾ら不幸になろうとも、心があまり痛まなかったりしてしまうのだ。」
ここの部分ですけど、私にはどうもわからない。だって同じロクでもないダメ人間が出てくる「ヒーローショー」のことはひだっちょさんは高評価ですよね。
いったいその違いはなんなのでしょうか。
あ、私はひだっちょさんとは逆で「サベイランス」は好きだけど「ヒーローショー」はダメなんですよね。
それはなんか「ヒーローショー」にはリアリティが感じられなかったからですね。
「ヒーローショー」はリアルっぽく撮ってるでしょ。でも私にはそれが伝わってこなかった。
逆に「サベイランス」は外国の話だというのもあるかもしれませんがアリに感じました。
それから、こういう徹底的に悪い登場人物好きです。
なんかひだっちょさんのレヴューに難癖付けてやろうとかそういう気はいっさいありませんから!
ざっと記事を読ませていただいたんですけれど、同意することが多かったですよ。
だから逆に自分と違う意見のレヴューを読むとそのことについて意見交換したくなってしまうんですよ。
ここの部分ですけど、私にはどうもわからない。だって同じロクでもないダメ人間が出てくる「ヒーローショー」のことはひだっちょさんは高評価ですよね。
いったいその違いはなんなのでしょうか。
あ、私はひだっちょさんとは逆で「サベイランス」は好きだけど「ヒーローショー」はダメなんですよね。
それはなんか「ヒーローショー」にはリアリティが感じられなかったからですね。
「ヒーローショー」はリアルっぽく撮ってるでしょ。でも私にはそれが伝わってこなかった。
逆に「サベイランス」は外国の話だというのもあるかもしれませんがアリに感じました。
それから、こういう徹底的に悪い登場人物好きです。
なんかひだっちょさんのレヴューに難癖付けてやろうとかそういう気はいっさいありませんから!
ざっと記事を読ませていただいたんですけれど、同意することが多かったですよ。
だから逆に自分と違う意見のレヴューを読むとそのことについて意見交換したくなってしまうんですよ。
2010年08月13日 20:26 | URL | sweep | 編集
Re: No title
>sweepさん
コメントありがとうございます!
> 「サベイランス」と「ヒーローショー」
あまりハッキリとした定義はないんですが、人として救いがあるか、無いかの違いではないでしょうか?
ヒーローショーの連中(鬼丸兄弟は別ですが)はまだ人の痛みと社会を知らない成長途中のガキとして描かれ
た節があり、人としての弱さも感じました。正義感ぶるつもりはないですが場合によっては更生(再生)する
可能性があると思います。そこが人間的な愛嬌に思えたのです。
ですが「サベイランス」の2人には人として救いがありません。自ら創り出した世界観を絶対だと信じ、悦に
浸りながら何の迷いもなくゲーム感覚で人を殺します。常識という定義で計ってしまえば、人としての倫理観が
崩壊しているんでしょう、”罪悪感”が全く感じられませんでした。人としての救いや愛嬌はありません。
徹底的に悪い登場人物とも思えませんでした。彼らの中には”悪”という定義が無いからです。社会を自ら放棄
した彼らにとっての常識は、彼らが創り出した世界観にしかありません。なので作品で繰り広げられた惨劇も
彼らにとっては当たり前の行為であり、そこには善も悪も無いのです。その人間性がどうにも受け付けられま
せんでした。リアルに描いてあるが故によけいそう思ったのでしょう。もちろん私の価値観での話ですが。
ちなみに「ヒーローショー」ですが、リアリティにはこだわってますがあくまでエンタメ作品として造ってある
ので、そこに違和感を感じるのは至極ごもっともだと思います。井筒監督の演出は意図したリアリティであり、
私自身チグハグな印象を持つ事もありますが、ストイックにリアルにならないアンバランスさが好きなんだと
思います。もしかしたら単に作風の好みなのかもしれませんが。
> だから逆に自分と違う意見のレヴューを読むとそのことについて意見交換したくなってしまうんですよ。
私自身意見交換は大歓迎です。どんな事でもそうですが、みなが同じ事を同じように感じ取るというのはあり
得ないですからね。それにこうやって意見交換をする事で、自分が思いもよらなかった何かを発見する機会が
得られるのですから、それって凄い事なんだなぁと思っています。
コメントありがとうございます!
> 「サベイランス」と「ヒーローショー」
あまりハッキリとした定義はないんですが、人として救いがあるか、無いかの違いではないでしょうか?
ヒーローショーの連中(鬼丸兄弟は別ですが)はまだ人の痛みと社会を知らない成長途中のガキとして描かれ
た節があり、人としての弱さも感じました。正義感ぶるつもりはないですが場合によっては更生(再生)する
可能性があると思います。そこが人間的な愛嬌に思えたのです。
ですが「サベイランス」の2人には人として救いがありません。自ら創り出した世界観を絶対だと信じ、悦に
浸りながら何の迷いもなくゲーム感覚で人を殺します。常識という定義で計ってしまえば、人としての倫理観が
崩壊しているんでしょう、”罪悪感”が全く感じられませんでした。人としての救いや愛嬌はありません。
徹底的に悪い登場人物とも思えませんでした。彼らの中には”悪”という定義が無いからです。社会を自ら放棄
した彼らにとっての常識は、彼らが創り出した世界観にしかありません。なので作品で繰り広げられた惨劇も
彼らにとっては当たり前の行為であり、そこには善も悪も無いのです。その人間性がどうにも受け付けられま
せんでした。リアルに描いてあるが故によけいそう思ったのでしょう。もちろん私の価値観での話ですが。
ちなみに「ヒーローショー」ですが、リアリティにはこだわってますがあくまでエンタメ作品として造ってある
ので、そこに違和感を感じるのは至極ごもっともだと思います。井筒監督の演出は意図したリアリティであり、
私自身チグハグな印象を持つ事もありますが、ストイックにリアルにならないアンバランスさが好きなんだと
思います。もしかしたら単に作風の好みなのかもしれませんが。
> だから逆に自分と違う意見のレヴューを読むとそのことについて意見交換したくなってしまうんですよ。
私自身意見交換は大歓迎です。どんな事でもそうですが、みなが同じ事を同じように感じ取るというのはあり
得ないですからね。それにこうやって意見交換をする事で、自分が思いもよらなかった何かを発見する機会が
得られるのですから、それって凄い事なんだなぁと思っています。
2010年08月14日 18:16 | URL | ひだっちょ | 編集