おにいちゃんのハナビ 10年日本
2010年10月17日 23:35

2010年9月26日新宿武蔵野館にて鑑賞
評価★★★★★★★★☆☆
監督:国本雅広
脚本:西田征史
出演:高良健吾、谷村美月、宮崎美子、大杉漣、早織、尾上寛之、岡本玲、佐藤隆太、佐々木蔵之介、塩見三省ほか
主題歌:藤井フミヤ「今、君に言っておこう」
配給:ゴー・シネマ
上映時間:119分
テレビでのドキュメンタリーが発端となり企画された、実在する兄妹をモデルに作られた感動作品。”実話”と紹介されているが、改変個所も多くその実態は違う・・・が、それが功を奏し成功している作品でもある。
急性白血病である華の病気療養のため、新潟県にある小さな町に5年前に引っ越してきた須藤一家。だが16歳になった華は病気の再発により半年間入院してしまう。入院生活を終え家に戻ってみると、兄である太郎が半年前から自室に引きこもっている事を知らされる。華の呼び掛けにも全く応じようとしない太郎に対し、何とか外に出て貰おうと友人たちにも協力してもらい試行錯誤するが、中々思いように上手くはいかず・・・。
(Yahoo映画レビューに投稿した「おにいちゃんのハナビ」感想文)
これほど素直に大泣きできる作品だとは思わなかった。外見は紛れもなく私の嫌いな押し付けがましい感動作なのに、その実態は見当違いも甚だしいほど違っている。・・・いや、そう思う人もいるかもしれない。だけど少なくとも自分は、劇場が明るくなるのを待って欲しかったほど泣いてしまった。いい意味で裏切られたって事だ。
その理由は投稿したレビューに書いたのでここでは割愛するとして、パンフを読むと判るんだけど、この作品”真実を基に作られている”と謳っている割に改変部分が多く、それを知る事でもしかしたら感動が薄れるかもしれないんだけど、その改変がある事で映画としては成功しているのも事実なのでちょっと書き出してみたい。
まず須藤一家は都会から引っ越してきた訳ではなく、地元で育った家族らしい。兄である太郎は引きこもりでもなんでもなく、友人たちと遊び呆けている間、病気の妹にあまり構ってあげる事なく亡くなってしまったため、それを悔いての花火作りだそうだ。つまり映画でいう所のドラマ部分(兄の成長と兄妹の絆)はほぼ創作と言ってもいいだろう。幻滅するかもしれないが、事実というのは往々にしてそういうモノ・・・とも云える。
だが、この創作部分が物語として実に巧く機能するため驚くほど感動できる・・・とも云えるのだ。描きたい事を誇張せずにちらかさず、丁寧且つ繊細に描写していくため真実より真実味が増してくる、とでも言おうか。泣かせようという作り手のあざとさが見えないため、例えそういう描写であっても素直に受け入れてしまうらしい。
って事は、一歩間違えば乱立する安っぽい作品にも成り得た、とも云える。しかもその要素は限りなく沢山詰まっているのだから。それって(当たり前なんだけど)作り手のセンスが如何に大事であるかをうかがい知る事にはならないだろうか?もし同じ企画・脚本で出演者が一緒であっても、作り手が違えば(いいも悪いも)全く違う印象を与える事になるだろうからだ。しかも”よくなる可能性”は限りなく低い、と言わざるを得ない。
だから何が嬉しいって、”この作品を観に行った事”これに尽きる。自分でも最終的に何が決め手で観に行ったのかはハッキリしないし、予告を観た限りでは観に行かない選択肢を取った筈の作品なのにワザワザ新宿まで観に行ったのだ。・・・まあ実際は絶賛できるほどの作品を見逃している事なんて日常茶飯事なんだけど、それでも嬉しい事に変わりはない。これ系の作品だから尚更かもしれないが。
世間的にはほとんど話題に上がらないし、それに伴い公開館数が少ないのはホント悔やまれるのだが、出来るだけ多くの人に観て欲しい作品だ。特にこれ系の作品に懸念を抱いている人には観て欲しい。もちろん受け取り方に個人差は出るだろうが、カルチャーショックを受ける人の方が断然多いと思うぞ。・・・っていうかさあ、くだらない映画を膨大に宣伝するんだったら、その何分の一でもいいからこの作品をフューチャーしてくれないかね?この作品こそが号泣できる感動作品なのだから。・・・褒めすぎ?
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