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”ホンモノ”と云う確かなる幻影 『マイ・バック・ページ』

2011年06月04日 06:43

『マイ・バック・ページ』鑑賞。

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1969年~1972年という日本では学生運動がピークに達し、やがて終焉に向かっていくその時代を背景に、ある若きジャーナリストが左翼思想の学生と奇妙な絆が結ばれていく様を追った社会派エンターテインメント作品。監督は『リンダ リンダ リンダ』の山下敦弘。・・・まあ一般的には”妻夫木聡&松山ケンイチのW主演”が話題といえるけど(なのに公開初日の1回目の上映で客が5人ってどういう事!?いくら片田舎とはいえ!)。


※ちょっとネタバレな文章かな?と、書き終わる頃に気が付きました。読むときは注意して下さい。


ちなみに本作品でメガホンを取った山下監督は1976年生まれであり、当然ながら作品の舞台であるその当時を知らない。まあ残り香ぐらいは嗅いだだろうけど。”時代を映すにはその時代を知る人がベスト”が理想である場合、監督にとって本作は鬼門とも云えるんだけど、そこをあえて必要以上に追従せず(もちろんキチンとした時代考証は成されている・・・はず)、ひとりの青年の成長過程といった人間ドラマとして表現する事で、時代を感じさせない普遍的な作品に仕上がっていた。監督自身いつも以上に直球勝負してきたからこそでもあるが。

それともうひとつ、知らないからこそ時代に翻弄される事なく、客観的且つ新しい視点によってその時代を見つめ直す事ができるといった利点もある(作り手の才能にもよるが)。その感性はどちらかと云えば現代人に近いため、今伝えるべき若者に届くであろうと云った意味でもその意義は深い。


また本作品、とにかくキャストが素晴らしい。

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まず、若きジャーナリスト沢田を演じた妻夫木聡だが、彼は(個人的にだけど)これまで観てきた作品でもベストと云ってもいい好演をしている。妻夫木自身が持ち合わす品のいい優しさみたいなモノが、いつもはどうにも隠しきれず、役によっては邪魔をしてしまう事が多いのだが、今回の役にはその品の良さが実にシックリとハマっており、彼でなければ沢田を演じるのは難しかったであろうと思わせるほどだった。



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松ケンは天性の才能を発揮するタイプの俳優であるため評価するのは難しいんだけど、今回、梅山という掴みどころの見付けにくい役をコチラが考える以上に魅力的に演じ切っている。やはり素晴らしい俳優だ。

また、驚くのが周りを固める役者陣たちで、舞台で活躍する俳優を多く起用していたためか申し訳ないんだけど知らぬ顔ばかりだったんだが、それが功を奏し新鮮な気持ちでドラマに集中する事ができた(もちろん演技も素晴らしい)。つまりは「GSワンダーランド」みたいな見た目だけのコスプレには陥らなかった、って事だ。



       637my.jpg

出番こそ少ないものの、やわらかくも確かな存在感を残し現代人との橋渡し(代弁者)と云った重要な役割を演じた忽那汐里や、ワンシーンながらベテランの風格に圧倒される三浦友和など、若手やTVドラマ等で活躍している役者陣の演技なども文句ない。演出する側の力量がいかに大事か、それがよく判る作品でもある。




とまあ「マイ・バック・ページ」は全てにおいて質の高い作品ではあるんだけど、それが素直に観客に伝わるかと云えばちょっと難しい作品かもしれない。特に松ケン演じる梅山は、時代に侵されたある種怪物であるため理解が難しく、今の人たちでは梅山に惹かれていく沢田の心情に疑問を持ってしまう可能性の方が高い。


       636my.jpg

写真は作品の冒頭、彼の人間性がハッキリ提示されるシーンであり、その提示された人間性は最後まで揺るぐ事はない。だからこそ観客は「なぜ惹かれるのか?」の理解に苦しむ。彼が口癖のように言い放つ「ホンモノになる」といった発言も、言葉の意味とは裏腹に”何も無い自分”を誤魔化す幼稚なまやかしでしかないからだ。


だが、そういったモノを覆してくれる屈指の名シーンが本作品にはキチンと用意されている。ほんの数分、固定カメラによる2人の何気ないやり取りだけなのだが、それだけで絆というモノが築かれる瞬間が垣間見れる。このときの2人がとにかく素晴らしく、無条件に涙が流れてきてしまった。


沢田が梅山に惹かれるのはもちろん”若いから”でもある。”魔力”はときに”魅力”となり、人生経験が浅いほど全てを簡単に覆してしまう。若ければ尚更にだろう。だからこそ最後、ほんの少し成長した沢田がほんの少しホンモノの男になれた事で作品は終焉となるのだ(”時代”ではなく、”人間”を描いたからこそのラストと云えよう)。このときの妻夫木がまたいい表情を魅せてくれる。



久し振りに骨のある日本映画だった。誰しもが共通して楽しめる作品ではないが個人的には大満足、多くの人に観て欲しい作品だ。・・・ってかもう少しお客さん来てよ、ホント。
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No title

これほどの高評価を見てしまうと、是非観たいなあ~~
ちょっと今、財政が悪化していてあまり使えず;
レンタルで借りたいと思います
食玩も節制してるので、ここで綺麗に塗装されたものが見られて嬉しいです^^b

そういえば先日トイ・ストーリー3を観たんですが
すごい良かったです^^
おっしゃるとおり、完成度高すぎて伸びしろの無さを感じちゃいますね
ここをこうすればいいのに、っていうところがナイww

似たようなことを感じたのが
最近観ている「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」っていう
長いタイトルのアニメです アラが無いなあと・・・

2011年06月06日 20:14 | URL | 塔 | 編集

Re: No title

>塔さん
コメントありがとうございます!


> これほどの高評価を見てしまうと、是非観たいなあ~~
> レンタルで借りたいと思います
レンタルでも劇場でも観て頂けると思って頂いた、その気持ちが嬉しいです!何かしらを胸に刻んでくれる、
素晴らしい作品だと思いますよ!


> 食玩も節制してるので、ここで綺麗に塗装されたものが見られて嬉しいです^^b
おお~そうなんですか、それはちょっとツライっすねェ・・・私の記事が少しでも役立ってくれていれば幸い
ですが・・・。


> トイ・ストーリー3
ずい分贅沢な要求であり感想なんですけどねェ、完成度が高過ぎて物足りないって。ただCGアニメの限界のよう
な気がしたんですよ、トイストーリー3って。これ以上手を加えるところが無いって意味でも。

ただそういう作品を造ってしまうピクサーもそれ以上に凄いんですが。・・・やっぱ贅沢な感想だなぁ。


> 「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」
この作品の事は知りませんでした。ノイタミナ枠のアニメっていうとハチクロとかと一緒のですかね?っていう
か最近全然アニメ見てないなぁ・・・新作のチェックもしていませんし。以前はシリーズ構成や脚本、監督さん
なんかで見る作品を決めていたりとかしてたんですが、最近は知らない人ばっかりで・・・すっかり取り残され
た気分ですよ。

2011年06月09日 22:15 | URL | ひだっちょ | 編集

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雑記(気になった事など)

【訃報】「トップガン」をはじめとする数々のアクション映画を手掛けてきたトニー・スコット監督が亡くなった。しかも自殺であるという可能性が濃厚と報道されている。もちろん他人の心の中が分かるはずもないんだけど、いい意味で頭を使わずスカッとする大作を連射(ここ最近は快作が多かった)してきた監督だっただけに、「何故?」という思いがどうしても頭から離れない。ホント人の気持ちは複雑なのだと実感する。ご冥福をお祈りします。

プロフィール

ひだっちょ

Author:ひだっちょ
埼玉在住のおっさん(パソコンは初心者)
性格:人見知りが激しく偏屈(ヒドイね)
趣味:映画(ホラー以外何でも)
定期購読誌:「映画秘宝」
        「HYPER HOBBY」
TV番組の好み:お笑い番組全般と特撮番組をよく観る.アニメ・ドラマは少々
好きな映画:「グラン・ブルー」
        「あの夏いちばん静かな海」
好きな戦隊:「タイムレンジャー」
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※個人的に「パワーレンジャー」の日本放映を願っている(切実に!)

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